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名古屋地方裁判所 平成4年(ワ)537号 判決

東京都北区西ケ原三丁目二番一-四一五号

原告

増田閃一

右訴訟代理人弁護士

朝比奈新

同右

酒井伸夫

名古屋市瑞穂区高辻町一四番一八号

被告

日本特殊陶業株式会社

右代表者代表取締役

鈴木亭一

右訴訟代理人弁護士

富岡健一

同右

瀬古賢二

右訴訟復代理人弁護士

舟橋直昭

主文

一  被告は、別紙物件目録(一)ないし(五)記載の各電界装置を、原告又は原告の指定する者のため以外には、製造、販売してはならない。

二  訴訟費用は、被告の負担とする。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨

第二  事案の概要

一  争いのない事実

1(一)原告は、昭和六二年四月に退官するまで東京大学工学部教授として、永年、静電気の基礎と応用に関する研究に従事してきた静電気工学の専門家であり、現在は福井工業大学長を務めている。

(二)  被告は、内燃機関用スパークプラグ、自動車部分品、ファインセラミック製品等の製造販売を主たる業とする株式会社である。

2  原告及び被告は、「沿面コロナ放電素子及びその製造方法」と称する発明及び「物体の静電的処理装置」と称する発明(以下、両発明を「本件各発明」という。)について、次のとおり、共同で特許出願をした。

(一) 発明の名称 沿面コロナ放電素子及びその製造方法

発明者 原告及び福浦雄飛

出願人 原告及び被告

出願日 昭和五七年九月七日

公開日 昭和五九年三月一三日

公告日 平成二年五月二二日

公告番号 平二-二二九九八

(二) 発明の名称 物体の静電的処理装置

発明者 原告及び福浦雄飛

出願人 原告及び被告

出願日 昭和五七年九月七日

公開日 昭和五九年三月一三日

公告日 平成三年七月二六日

公告番号 平三-四九一九八

3  原告及び被告は、昭和五八年三月三日、契約書(甲第三号証)をもって、次の内容の「特許および技術ノウハウに関する契約」(以下「本件基本契約」という。)を締結した。

前文

原告は、永年にわたって電界装置及びその応用製品の研究開発に従事し、これらに関する多数の発明、考案及び技術ノウハウを有しており、これらの実用化、商品化に当たってファインセラミック材料の活用による電界装置の改良を必要としている。

被告は永年にわたってファインセラミック材料及びその応用製品の研究開発及び製造販売に従事し、その加工、生産に関する多大の経験と技術ノウハウを有しており、電界装置及びその応用製品の特定市場分野における商品化及び製造販売に関心を有している。

原告及び被告は、本件各発明の実用化に当たり相互の利益のため友好的協力関係の上に立って、次のとおり合意する。

第一条(合意の対象)

本件各発明と、これに関連して被告の希望若しくは原告の申出により又は第三者から持ち込まれた問題解決のため、原告が被告に提供する発明、考案、技術ノウハウを、原被告相互の利益のため効果的に処理及び利用することを合意する。

第二条(特許出願)

原告は、本件各発明を第三条以下の条件の下に、原被告共同名義で特許出願することに同意する。本件各発明の外国出願又はこれに関連する発明の国内ないし外国出願が必要となった場合、その取扱いについては別途に協議する。特許の出願及び維持に要する経費は、被告が負担する。

第三条(所有権及び実施権)

1  被告は、本件各発明(その関連発明及びそれらの外国出願を含む。)に基づく電界装置及びその応用製品の、原告が合意する特定市場分野における製造・販売権を有する。

2  原告は、原告自体又はその特定する第三者が、前記特定市場以外の市場分野において本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品を製造・販売する権利を有する。

3  被告は、原告の求めによって前項のために必要となる電界装置及びその応用製品を原告又は原告の指定する第三者に製造供給する義務を負う。原告は、被告との合意なくして被告以外の供給者から前記電界装置の供給を受けない。

4  被告は、本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品について、第一項の特定市場分野以外の分野において、原告との合意なしに第三者のために試験、製造、販売及び技術ノウハウの提供を行ってはならない。

5  原告及び被告は、相互に本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品の設計、製造及び改良に関し、相手方の求めに応じ、全面的な協力を行う。

6  被告が本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品の第一項の特定市場分野における製造販売を行わないときは、被告は、原告が原告自体又はその指定する第三者においてその製造販売を行うことを認める。

第四条(対価)

1  第三条第一項の被告が製造・販売権を有する本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品の特定市場分野については、原被告別途に協議の上決定する。

2  第一項の特定市場分野の合意に当たって被告は原告に一時金を支払うものとし、その額は別途に協議する。

3  第一項に定める特定市場分野における本件各発明に基づく電界装置及びその応用製品の製造ないし販売に対して被告は原告に実施料を支払うものとし、その額は別途に協議する。

第五条(秘密保持)

原告及び被告は、本契約の存在及び本契約に関連する情報と技術ノウハウを相互の承諾なしに第三者に洩らさないことを誓約する。

第六条(報告義務)

原告は、実施料支払の基礎となる被告の第三条第一項に関連する業務内容について知る権利を保留する。

第七条(解約)

本契約の解約、解除又は終了は、原被告協議の上決めることができる。

第八条(その他)

本契約の実行に関連して疑義が生じた場合、原被告互いに誠意をもって円満解決に努めるものとする。

4  原告及び被告は、昭和六一年二月一八日、契約書(甲第四号証)をもって、次の内容を含む「セラミックオゾナイザー及びその電源に関する特許・技術ノウハウ・製造・販売についての契約」(以下「本件実施契約」という。)を締結した。

(一) 原告、被告共に日本国内におけるセラミック外面温度摂氏二〇〇度と摂氏マイナス三〇度との間の常温域において作動する本件電界装置及び任意の電源から構成されるセラミックオゾナイザー装置(オゾン発生装置。以下「契約製品」という。)並びに契約製品をその構成部品として組み込んだ製品及び他の用途のために契約製品又はその一部を変更した製品(以下、これらの製品を「応用製品」という。)を製造、販売及び使用する権利を有するものとし、これを共同分野とし、それ以外の分野は原告の独占分野として原告のみが本件各発明を実施する権利を有するものとする。

(二) 原告は、右共同分野以外の分野において本件各発明を独占的に実施する権利を有する。

(三) 被告は、原告に対し、一時金として契約締結後一か月以内に一〇〇〇万円を支払う。

(四) 被告は、原告に対し、実施料として次の製品及び装置の正味販売価格について、次の率による実施料を支払う。

契約製品 五パーセント

応用製品に組み込まれた契約製品 一〇パーセント

(五) 契約期間は五年とし、期間満了の六か月前までに当事者の一方から他の当事者に対し文書による契約終了の意思表示がない場合は、自動的に一か年延長されるものとし、以後も同様とする。

5  被告は、本件実施契約に基づき原告に一時金及び実施料を支払った上、本件各発明に基づく電界装置である別紙物件目録(一)ないし(五)記載の各装置(以下「本件各装置」という。)を製造販売し、右共同分野(以下「本件共同分野」という。)においてその業務を拡大した。

6(一)  しかし、被告は、平成二年八月六日付けの内容証明郵便により、原告に対して本件実施契約を終了させる旨の意思表示をした。

(二)  その結果、本件実施契約は平成三年二月一七日をもって終了したが、被告は、その後も、本件各装置を、原告及びその指定する第三者以外の者のために製造・販売している。

二  争点

1  原告の主張

(一)(1) 本件各発明は、原告が永年にわたる研究の結果、昭和四三年ころから次々に発見、発明した電界カーテンに関する成果の一つであり、被告は、本件各発明自体については何ら関与しておらず、単に原告の要請により製品の寿命を延長するための材料としてセラミックを使用した試作品を作成し、原告に提供したにすぎない。

(2) しかし、原告は、被告から、本件各発明の自動車エンジンへの適用という市場分野について重大な関心と利害関係を有するから、是非この市場分野を独占的に確保したい、その余の市場分野には関心がないから、その余の市場分野については原告又は原告が指定する者が独占的に実施する権利を持つという条件で原告と被告の共同出願とすることを認めてほしいと要請されたため、これに応じて、被告の研究開発担当常務取締役であった福浦雄飛を発明者に加え、被告と共同出願をしたものである。

(二) 本件基本契約は、右のような出願の経緯を踏まえて締結されたものであって、被告は、本件基本契約により、原告との間で特定市場分野として合意された市場分野以外の市場分野では、原告又は原告の指定する第三者のため以外には、本件各発明を実施してはならないという義務を負担するに至ったものである。

(三)(1) なお、本件共同分野は、本件実施契約において、本件基本契約に定める特定市場分野として定められたものである。

(2) しかし、本件実施契約はすでに終了しているので、被告は、本件基本契約に基づき本件共同分野において本件各発明を実施することはできない。

(四) よって、原告は、本件基本契約に基づき、被告に対し、原告又は原告の指定する第三者のため以外に本件各装置を製造・販売することを中止することを求める。

2  被告の主張

(一)(1) 本件各発明は、出願前公知の技術と被告が永年にわたり蓄積したセラミック製造技術、ノウハウとを結合した発明であって、その完成については、被告の従業者が主要な役割を果たした。

(2) したがって、本件各発明は、原告の創意のみにより完成されたものではない。

(二)(1) 本件基本契約においては、被告が独占的に本件各発明を実施することができる特定市場分野と原告が独占的に実施することができるそれ以外の市場分野とを別途協議の上決定することになっていた。

(2) しかし、原被告間で、右の特定市場分野についての合意は成立していないので、特許法七三条二項にいう「別段の定め」は、存在しない。

(3) そうすると、共同出願人である被告は、同項に定める範囲で、本件各発明を実施する権利を有する。

(三)(1) なお、本件実施契約においては、本件基本契約における特定市場分野に関する規定が廃され、改めて本件共同分野が設けられた。

(2) したがって、本件基本契約における特定市場分野に関する条項は失効しており、本件実施契約が終了しても、その効力が復活することはない。

(四) したがって、原告は、本件基本契約に基づき、被告に対し本件各装置の製造販売を差し止めることはできない。

第三  争点に対する判断

一  特定市場分野の決定と被告の実施権との関係について

1  本件基本契約に停止条件は付されていないから、原告及び被告は、本件基本契約の締結により、直ちに、その内容に応じた権利義務を負担することになる。

2  そこで、特定市場分野の決定と被告の実施権に関する本件基本契約における合意内容について検討するに、本件基本契約においては、被告は特定市場分野において本件各発明を実施することができるが、それ以外の市場分野においては原則として本件各発明を実施してはならないものとされており、他方で、その特定市場分野は後になされる原被告間の協議により決定されるべきものとされ、さらに、その決定に際しては合意による一時金の支払が必要とされるとともに、被告が原告に支払うべき実施料の額を両者の合意により定めることが予定されているのであるから、本件基本契約(第三条第一項、第三項及び第四項並びに第四条第一項)は、その文言からして、被告は、原被告間の合意により特定市場分野として決定された具体的分野においてのみ実施権を有し、それ以外の分野においては、原告又は原告の指定する第三者のため以外には、本件各発明を実施してはならない旨規定しているものと解するのが相当である(特許法七三条によると、特許権の共有者は、それぞれ、当該特許発明を自ら実施することができるが、他の共有者の同意がなければ、専用実施権を設定し、又は通常実施権を許諾することはできないところ、原告は一学者であって、自ら本件各発明を実施する能力はなく、他方、被告は、本件各発明を独力で実施する能力を有する株式会社であるから、同条によれば、本件各発明は、事実上、被告のみが実施でき、しかも、被告は原告にその対価を支払う必要がないことになる。したがって、本件基本契約が、被告に対し、特定市場分野が決定されるまで自由に本件各発明を実施することを認めていると解することは、本件基本契約による前示合意を実質的に無意味なものとすることになり、本件基本契約を締結した当事者の合理的意思解釈として相当とはいえない。)。

3  したがって、特定市場分野として具体的分野が決定されない限り、本件基本契約第三条第一項により被告が本件各発明を実施できる特定市場分野はなく、したがってまた、同条第四項の規定する「第一項の特定市場分野」は存在しないことになるから、本件基本契約(第三条第一項、第三項及び第四項並びに第四条第一項)は、特定市場分野が決定されるまでは、被告は、いかなる市場分野においても原告又は原告の指定する第三者のため以外には本件各発明を実施してはならない旨定めているものと解すべきである。

4  なお、本件全証拠によるも、右解釈を妨げる事情を認めることはできない。

二  本件実施契約による本件基本契約の一部変更について

1  本件実施契約には、次の内容の合意が含まれている(甲第四号証による。)。

(一) 本件実施契約は、契約製品(第一条第二項において定義するセラミックオゾナイザー装置)等の製造・販売・使用に関して原被告間の関係を規定し、かつ、本件基本契約の規定の一部を変更することを目的とするものであること(第二条)。

(二) 本件実施契約は、本件各発明、契約製品等に関する原被告間のすべての合意を含むものであり、本件基本契約その他の合意で本件実施契約に抵触する事項は、本件実施契約により変更されたものとみなされること(第一四条)。

2  そこで、次に、原被告の実施分野に関する本件基本契約の内容と本件実施契約の内容とを対比するに、本件基本契約においては、被告が独占的に実施できる特定市場分野と原告が独占的に実施できる特定市場分野以外の市場分野とに分けられているが、本件実施契約においては、原告と被告がそれぞれ実施できる本件共同分野と原告が独占的に実施できる本件共同分野以外の分野とに分けられており、被告が独占的に実施できる分野は定められていない。

しかし、本件実施契約における本件共同分野の定めは、前記一において説示したとおりの内容を有する本件基本契約を前提として合意されたものであることからすれば、本件共同分野を特定市場分野として指定することにより被告が実施できる分野を決定するという側面と、特定市場分野とされたにもかかわらず本件共同分野について原告に実施権を付与するという側面とを有するものと解すべきであって、特定市場分野に関する本件基本契約の規定を廃止して新たに原被告がそれぞれ実施できる分野を定めたものと解すべきではない。したがって、本件共同分野の定めのうち、本件共同分野について原告に実施権を認める部分のみが、被告が実施権を認められた特定市場分野について原告の実施権を排除している本件基本契約第三条第二項と抵触することになるので、同項は、本件実施契約第一四条により、本件共同分野への適用を排除され、その意味で、本件基本契約は、一部変更されたことになる。

次に、本件実施契約が本件共同分野以外の分野について原告に独占的実施権を付与している点については、本件基本契約によっても原告は特定市場分野として指定された具体的市場分野(本件共同分野がこれに当たる。)以外の分野について独占的実施権を有しているから、本件基本契約と本件実施契約との間に抵触はない。

また、本件実施契約において被告が独占的に実施権を有する市場分野について規定していない点については、前示のとおり、本件基本契約においても、特定市場分野が具体的に決定されない限り、被告が独占的に実施権を有する市場分野はないから、本件基本契約と本件実施契約との間に抵触はない(なお、本件実施契約において、被告が独占的に実施権を有する分野について触れられていないことから、本件実施契約が、将来、本件基本契約に基づき特定市場分野を定めることを排除しているとまで解することはできない。)。

3  右に判示したところによると、本件実施契約は、原被告の実施分野に関しては、本件基本契約第三条第二項の本件共同分野への適用を排する限度で本件基本契約の効力に影響を与えるが、本件基本契約のうち、被告が原被告間の合意により特定市場分野として決定された具体的分野においてのみ実施権を有し、それ以外の分野については原告又は原告の指定する第三者のため以外に本件各発明を実施してはならないとしている部分(第三条第一項、第三項及び第四項並びに第四条第一項)は、本件実施契約と抵触しておらず、したがって、本件実施契約によって失効することはない。

4  なお、本件全証拠によるも、右解釈を妨げる事情を認めることはできない。

三  被告の本件基本契約違反について

右のとおりであるから、本件実施契約が終了し本件共同分野の定めが効力を失ったことにより、被告は、本件基本契約(第三条第一項、第三項及び第四項並びに第四条第一項)により、原告に対し、原告又は原告の指定する第三者以外の者のために本件各発明に基づく電界装置の製造・販売をしてはならないとの不作為義務を負っていることになる(本件基本契約は、特許法七三条二項との関係では、同項の別段の定めに当たる。)。

したがって、被告が現在原告及びその指定する第三者のため以外に本件各装置を製造販売している行為は、本件基本契約の定める不作為義務に違反しており、原告は、本件基本契約に基づいて、これを差し止める権利を有することになる。

第四  総括

よって、原告の本件請求は理由があるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡久幸治 裁判官 後藤博 裁判官 入江猛)

物件目録(一)

平板型電界装置

第1図に例示するように、平板状のアルミナ・セラミック基板(1)の表面(2)上にタングステンよりなる放電極(3)を設け、該基板(1)の肉厚内又は該基板(1)の裏面(5)上に該放電極(3)に対向してタングステンよりなる面状の誘導電極(4)を設け、かつ該放電極(3)及びその周囲の基板表面領域を覆うごとくにアルミナ・セラミックよりなる放電極保護層(8)を設け又は設けず、これらすべてを一体として燒結して該タングステンとアルミナの境界層部分にメタライズ層を形成することにより両者の接着強度を大幅に高めて形成した装置であって、該放電極(3)と該誘導電極(4)の間に交流高電圧を印加し、該放電極(3)の周縁域からその周囲の基板表面(又は該保護層(8)表面)に沿って交流沿面放電を発生させるもの。

第1図 平板型電界装置(OUPタイプ)

〈省略〉

物件目録(二)

ヒータ付き平板型電界装置

第2図に例示するように、物件目録(一)の平板型電界装置の面状誘導電極(4)と該基板裏面(5)の間のアルミナ・セラミック基板肉厚内に該基板を加熱するためのヒータ線を埋設した装置。

ただし、ヒータ線接続端子〈10〉〈11〉は、第2図の例示と異なり、アース側(図面右側)に配置されている。

第2図 ヒータ付平板型電界装置(OUP-Hタイプ)

〈省略〉

物件目録(三)

多線平板型電界装置

第3図に例示するように、物件目録(一)の電界装置において放電極(3)を複数として、これを互いに平行にアルミナ・セラミック基板(1)の表面(2)上に設けた上、それぞれの両端をタングステンよりなる左右一対の接続線(12)に接続し、誘導電極(4)を大きくして放電極群(3)のすべてに対向するようにし、また、セラミック保護層(8)も大きくして該放電極群のすべてを覆うようにし、かつこれらすべてを一体として燒結し該タングステンとアルミナの境界層部分にメタライズ層を形成することにより両者の接着強度を大幅に高めた装置であって、該放電極群(3)と該誘導電極(4)の間に交流高電圧を印加し、該放電極群(3)の周縁域からその周囲の基板表面(又は該保護層(8)表面)に沿って交流沿面放電を発生させるもの。

第3図 多線平板型電界装置(IS-タイプ)

〈省略〉

物件目録(四)

多相平板型電界装置

第4図に例示するように、平板状のアルミナ・セラミック基板(1)の表面(2)上にタングステンよりなる線状のU相放電極群(14)を互いに平行かつ所定のピッチpを隔てて設け、該基板(1)の肉厚内に上記U相放電極群(14)の各ピッチ間にこれと平行にかつ等間隔b2をもって図示のようにV相とW相の二組のタングステンよりなる線状放電極群(15)及び(16)を設け、さらに該放電極群(15)、(16)の背面側に一定厚みt4のアルミナ・セラミック層を隔ててこれら放電極群と直交するように互いに平行かつ等間隔にU相接続線(17)、V相接続線(18)及びW相接続線(19)を該基板(1)の肉厚内に埋入して設け、該U相接続線(17)を該U相放電極群(14)に接続の上、該基板(1)の裏面(5)上に設けたU相端子(20)に接続し、該V相接続線(18)を該V相放電極群(15)に接続の上、該基板(1)の裏面(5)上に設けたV相端子(21)に接続し、該W相接続線(19)を該W相放電極群(16)に接続の上、該基板(1)の裏面(5)上に設けたW相端子(22)に接続し、該U相放電極群(14)及びその周囲の基板表面領域を覆うごとくにアルミナ・セラミックよりなる放電極保護層を設け又は設けずして構成し、これらのすべてを一体として燒結し該タングステンとアルミナの境界層部分にメタライズ層を形成させることにより両者の接着強度を大幅にあげた装置であって、該U相端子(20)、V相端子(21)及びW相端子(22)を介して三相交流高電圧をU相放電極群(14)、V相放電極群(15)、W相放電極群(16)に相順に印加し、該基板(1)の表面(5)上の空間領域にU相放電極(14)からW相放電極(16)(図では左から右)に向かって進行する進行波不平等電界を形成せしめ、また電圧をある閾値以上に上げることにより上記機能に加えて、該U相放電極群(14)の周縁域から該基板表面(又は該保護層表面)に沿って交流沿面放電を発生させるもの。

第4図 多相平板型電界装置(3相型、一相露出タイプ)

〈省略〉

物件目録(五)

円筒型電界装置

第5図に例示するように、物件目録(一)ないし(三)の平板型電界装置の基板(1)を放電極(3)が内側となるように、円筒状に丸めたごとき構造の装置であって、その他の構造及び機能については物件目録(一)ないし(三)の平板型電界装置と同様である。

該放電極(3)と該誘導電極(4)の間に交流高電圧を印加し、該放電極(3)の周縁部からその周囲の基板表面(又は該保護層(8)表面)に沿って交流沿面放電を発生させるもの。

ただし、以下のものを含む。

〈1〉 第5図(b)に例示するように、該面状誘導電極(4)をセラミック円筒基板(1)の肉厚内でなく外表面上に設けたもの。

〈2〉 第5図(c)に例示する該セラミック円筒基板(1)の一端にセラミックの底ぶた板(23)を設けて両者を一体として焼結し、気密の袋状構造としたもの。

〈3〉 水冷ジャケット(25、点線)等に挿入するためその他端付近に環板状のセラミックのつば板(24)を一体的に燒結して設けたもの。

第5図 円筒型電界装置

〈省略〉

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